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「働く人」=「WORKMAN」 建築の世界で働くさまざまな人を紹介していきます。




大阪市西本町の交差点に、日々高く伸びゆく高層ビルがある。最上部にはタワークレーンがあり、大きなトラックも出入りするため建設現場であることはわかるが、壁面のほとんどに外壁パネルが設置され、その外観はすっきりと美しい。

「オリックス西本町1丁目ビル」の建築現場である。この建築現場では、階段やエレベータのある中心部を先に造り、追って外周を作っていく〈センターコア躯体先行構築〉により、施工中もシャープな外観を保っている。

高層ビルを建設する現場では、ゼネコンの技術職、事務職と、協力会社の鳶工、型枠大工、内装工、サッシ工、タワークレーンオペレーターなどの専門技能を持った職人を合わせ、総勢数百人がそれぞれの“技”を最大限に発揮し、チームワークを取りながら、一大プロジェクトを遂行していく。多くの人々をまとめ、率いていくのが、作業所長である。
その巨大な組織を束ねる丁野成人さんは、「無事故、無災害で、高品質の建物を完成させる」ことを目指し、「コミュニケーションを密に取って、一人ひとりの力を最大限に引き出し、活かすことが大切」と語る。
「2年かけて延べ10万人近くの協力会社の人々と100億円規模のビルをつくるということは、一企業の社長と同様の立場であると言えます。したがって、経営管理(マネジメント)の視点で現場に取り組むことが作業所長には求められます」。


施工が進む「オリックス西本町1丁目ビル」の外観。


作業所長みずから「ビジョン」と「ゴール」を明確化し、明解なスローガンや具体的なビジュアルで分かりやすく伝えて、この建築現場に関わる全員が共有できるようにしている。

「作業所長方針」をもとに、プロジェクトのビジョンとゴールを関係者全員に周知徹底した。また、メンバー一人ひとりにも「個人のビジョンとゴール」を設定させるなど、各人のモチベーションを高めるための取り組みも積極的に行っている。さらに、入口や休憩室、階段など現場の至る所にスローガンや目標をビジュアルもふんだんに使ってわかりやすく掲げ、情報の共有化を図っている。どの現場でも見られる当たり前の光景だが、実は、その裏側には作業所長の熱い思いが込められているのだ。実際の現場からは「方針がより具体的に、さまざまな角度から示されるので、とてもわかりやすく、効率的に取り組める」「自分たちの専門分野からのアイデアを提案しやすい雰囲気がある」などの声が聞かれる。


朝礼風景。プロジェクター、図表などを使ってわかりやすく説明する「視覚的朝礼」を行っている。全員の気持ちを一つに束ね、士気を高めていく。

「モノづくりの醍醐味を一人ひとりに味わってほしいですね。そのためにも、働きやすい環境を提供し、施工を効率的に進めていけるようトータルに管理していくことが私の役割であり、やりがいでもあります」。
揺るぎないビジョンを示し、実践し続ける作業所長は、数百人のスタッフと共に今日も汗を流す。

オリックス西本町1丁目ビル 概要

建築主:合同会社 西本町デベロップメント
建築地:大阪市西区西本町1丁目1-6他
工期:2008年12月22日~2011年3月18日
敷地面積:2,694.91㎡
規模:地下3階 地上29階 塔屋1階
構造:RC・S・SRC造(免震構造)
用途:貸事務所・一般店舗
延床面積:41,629.55㎡
設計・施工:竹中工務店