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けんせつ小町

技能者STORY

“つくる”に魅せられた女性たちの物語 日建連では、専門工事を行う協力会社のけんせつ小町も応援しています。
今回、女性技能者がどのように入職し、現在の仕事と向き合い、これからのキャリアを描いているのかを取材し、「“つくる”に魅せられた女性たちの物語」として皆様にお届けします。
未来のけんせつ小町への力強いメッセージがたくさん詰まったストーリーとなっているので、多くの皆さんに読んでいただきたいと思います。

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第7回

「先輩から褒められた一言が、元気の素!」

小林千恵さん(2013年入社)

株式会社東和コーポレーション)

スリーブ工(すりーぶこう)
スリーブとは、給排水や空調のための管を部屋や階を超えて壁や床・梁などを貫通させる場合に、そのスペースを確保するための管です。これらの管は紙筒(ボイド管)や塩ビ、鋼板が用いられ、コンクリート打設後に後付けすることができないので、コンクリート打設前に、あらかじめ設置する作業が必要です。この作業をする技能者をスリーブ工と言います。
 具体的にはスリーブの位置に工事の基準となる線をしるす「墨出し」、スリーブ材の取り付けを行う「スリーブ工事」、天井に配管やダクトを吊るボルト用のめねじを予めコンクリート打設前の床面に打ち込んでおく「インサート工事」を行います。
 設備工事の一部として多くの人たちと協力しながら建設物の設備工事を完成させ、使う人のライフラインを支える仕事として重要視されている仕事です。

地元の先輩の一言から始まった入職

小林さんは5年半ほど前に福祉業界から転職し、今の会社に入社したという。なぜこの業界にやってきたのかを尋ねると、どうやら地元の先輩からかねがねスカウトされていたと言う。
「地元の先輩が設備関係の仕事をずっとやっていて、私ならその仕事をやれるのではないかと話をしてくれたんです。その時は返事をしなかったのですけど……」 しかしその後、彼女は転職することを検討していた。そんな時に再び先輩が「転職する気があるなら、一緒にスリーブ工をやろう!」と声をかけてくれたという。やがて小林さんも「やってみよう」という心持ちになり、入社を決めた。その先輩が働いていた会社というのが、現在彼女の所属する株式会社東和コーポレーションだった。入社当初はその先輩が指導役になり、その後他の先輩職人たちの背中を追いながら、小林さんは技能を身に付けていった。
女性の占める割合が比較的高い福祉業界から、男性が多く、しかも年上の職人に囲まれる確率の高い建設業界へ。入社当初は緊張もあっただろうが、実際のところどうだったのか。
「周りの職人さんがとても優しくしてくださって、『これはこうすればいいんだよ』と仕事を教えてもらいました。しかも、私とはまったく違う分野の人まで仕事を教えてくださったりして。私はすごく恵まれているな、と思います」
現場の環境を話してくれる小林さんの笑顔は明るい。所属や職種を問わず、現場にいる様々な人と良好な関係を築いている。

イメージ現場では様々な職種の人と多くの言葉を交わす。

建物の生命線を支える重要な仕事

小林さんが主に担当しているのは「スリーブ工事」と呼ばれる工程。建物にとっての血管ともいえる空調や衛生の配管を通すために、あらかじめコンクリートに配管用のスペースを確保するための工程だ。
建物の床下や天井裏、壁のなかには空調管や給排水管など、建物を使う人々にとって必須の機能を担う配管が張り巡らされている。工事の際にその貫通をスムーズに行えるように、コンクリートを流し込む前にあらかじめ配管のための「穴」を用意するのがスリーブ工事だ。「スリーブ」とは筒状の型枠のことで、配管を通す予定の場所にこの筒を設置し、コンクリートがスリーブ内に入り込まないようにするというのが工事の概要である。
「スリーブ工事の重要さはなかなか感じ取ってもらえない」と東和コーポレーションの社員たちは口を揃えて語る。「配管のためのスペースを確保する工程」というとシンプルに聞こえるが、その重要性はきわめて高いのだ。少しでもスリーブを置く場所を間違えれば、綿密に計算された上で決められた建物内の設備設計にズレが生じ、最悪の場合は漏水などにつながることになる。そうなった場合、コンクリートの打ち直しなどといった経済的・時間的なロスを引き起こしかねないのである。

イメージコンクリート打設前の鉄筋の間にスリーブを手際よく据え付けていく。

マルチスキルは1日にしてならず

スリーブ工事においてどのような仕事を担当しているのかと小林さんに尋ねると、「道具を出したほうが早いかも」と自身の“商売道具”を披露してくれた。

イメージ小林さんの商売道具の数々。右から2つ目の道具が「ハッカー」。

「これは『ハッカー』といって、鉄筋を結ぶ時に使う道具ですね。鉄筋屋さんが鉄筋を組んだ後、スリーブや補強筋を留める時に使うもので……

そう言って様々な道具を手に取ってはどういう作業を説明してくれる小林さん。ひとくくりにスリーブ工と言うが、複数の工程を担う。多数の工程・工具を説明してくれる小林さんの姿に、この仕事への努力がうかがえた。「最初は教えてもらったことができなかったんです」と当時を振り返る。
「当時の現場職長が練習するための資材を用意してくれて。ひたすら自分で練習したんです。技術を覚えるまでの過程が一番大変だったなと思います」
現場以外で特訓にはげみ、半年ほどして初めて仕事として最低限のラインは越えたかなという実感が湧いたという。5年半経った今、「一人前という実感があるのでは?」という問いかけには、「まだまだですよ」と笑っていた。
「自分では『いい線行ってるかな』と思うこともありますが、周りからは『まだまだ』と言われますし、まだまだ半人前です。今はなんとか足を引っ張らずに仕事をしているという感じです

彼女が持つスキルに対するストイックかつ謙虚な一面が垣間見えた。

イメージまだコンクリートが打設されていない鉄筋の上を慣れた足取りで進む。

所属・職種を超えてつくり上げる現場

今回取材でうかがった現場は、都内の大規模なコンサートホールの建築現場。まちづくりプロジェクトの一環として建設が進められていて、完成後は西東京最大級の市民ホールになる予定だという。この現場では1日あたり100名ほどの職人が活躍しており、女性の職人は多い日でも6名ほど。そんな女性同士のコミュニケーションは活発だという。更衣・休憩等に使う現場内の女性用休憩室はプレハブの2階に設けられているが、これはカーテンだけではなく、周囲の目線からカバーされる配慮だという。

イメージ元請会社、協力会社の壁はなく、コミュニケーションは良好だという。

また、女性同士に限らず、現場内では所属会社や職種を超えた交流が深い。小林さん自身も業務の性質上、大工、鉄筋工といった職人とは頻繁に言葉を交わし、他の業種の職人からも仕事上のアドバイスをもらうことが多いという。さらに、職長たちの発信による休憩室の装飾やイベント開催など、現場全体一体となって盛り上げていくための取組みが進められている。取材時は2月14日が近づいていたため、「バレンタインイベント」が展開されていた。

イメージ休憩室の前に設置されたバレンタイン撮影特設会場。
こういった作業をフットワーク良く行うことのできる現場の雰囲気が伝わってくる。

将来へのチャレンジに携える言葉

女性として建設業界で働くことについて小林さんに話をうかがった。 「例えば結婚して妊娠したら、安全帯が付けられなくなるので、その時点から現場の仕事に入れない状態になりますよね。そのあと出産して、すぐ仕事に復帰できるのかなと不安になります。この仕事は続けたいと思うんですけど……」
産後の復職に対する不安が胸中にあるようだ。彼女が所属する営業所に勤務する竹中さんはこの不安を受け止めて、小林さんに向けるように同社の制度を話してくれた。 「東和コーポレーションは産休・育休の制度が整備されています。しかし、内勤の女性が取得した事例は豊富にあるものの、現場に出ている技能者が取得した例はまだありません。ひょっとしたら、小林さんが同社における“ママ技能者”の第1号になるかもしれないと想定しながら、いま本社でも準備を進めている段階です」
 上長である竹中さんの話を聞いたあと、少し照れながら「今はちょっと保留にしてるんですけど」と言いながら話しだした。
「施工管理の資格など、建築のお仕事に関係する技能を身につけたいなと思っています。自分のなかで『これは欲しいな』と思っているんです。建築の世界をもう少し広範囲に、自分の目で見てみたいと思うんです。もちろん、いまの仕事の中で工具を扱うために必要な資格が増えてきているので、そういった資格も取得したいですが」

自身の将来を見据えて技術研鑽にはげむ小林さんの言葉に、一緒に働いている竹中さんも笑顔を見せた。

イメージ仕事の話を明るく語る小林さんと上長の竹中徹さん。

最後に、いきいきと仕事に臨む小林さんに、「元気の源」は何かと尋ねてみた。
「私をこの仕事に誘ってくれた先輩がある日ポロッと言ってくれた一言です。『お前は何があっても絶対途中で放り投げないよな』と。その一言が、元気に、前向きになる源です」
小林さんの強い責任感や仕事熱心なところを見出した一言なのだろう。「他にも何かないですか?と先輩に聞いても、『ヒミツ、ヒミツ』と言って教えてくれないんですよ」と照れ笑いする彼女の顔は、とても誇らしげだ。
業種・職種を問わずに声を掛けてくれる現場仲間に囲まれ、先輩からもらった「元気の源」を大切に抱く小林さんにとって、未来は活躍の場の宝庫と言える。

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