けんせつ小町

技能者STORY

”つくる”に魅せられた女性たちの物語

日建連では、専門工事を行う協力会社の
けんせつ小町も応援しています。
今回、女性技能者がどのように入職し、現在の仕事と向き合い、
これからのキャリアを描いているのかを取材し、
「“つくる”に魅せられた女性たちの物語」として
皆様にお届けします。
未来のけんせつ小町への力強いメッセージが
たくさん詰まったストーリーとなっているので、
多くの皆さんに読んでいただきたいと思います。

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第5回

「技術向上の達成感を胸に、日々チャレンジ!!」

大崎友里さん(2003年入社)水谷建設株式会社

バックホウオペレーター(ばっくほうおぺれーたー)
建設工事現場では土ならし、掘削、移動、運搬などのために様々な重機(建設機械)が活躍しています。
特に造成時は土の掘削、移動にバックホウ(ショベルカー)が欠かせません。このバックホウを指定の位置まで移動させ、操縦するのが「バックホウオペレーター。基礎となる地盤を調整するエキスパートたちです。
近年では女性の重機オペレーターが増え、今回取材させていただいた現場でもバックホウだけではなくダンプなど大型の重機を操る女性たちの姿を見かけ、この業界で女性が活躍する機会が増えていることがうかがえました。

きっかけは高校の先生からの勧め

今回取材させていただいた大崎さんはバックホウオペレーター。
バックホウを操縦して、地面を均(なら)したり土を盛ったりして土地を整備する造成(ぞうせい)工事を担当している。
2003年に高校を卒業して入社し、現在この仕事は16年目になる彼女。普通科の出身で、周囲に建設業界へ進む人が少ないなかでの進路選択だった。
「一日中パソコンを使ってやるような仕事はたぶん向いていなくて。体を動かす仕事がしたいなと思っていました」と当時の心境を語る大崎さん。
水谷建設㈱に入社したきっかけは、部活動の顧問を務めていた先生からのすすめだったという。
「就活をするにあたってどうしようかと迷っていた時に、先生が『デスクワークは向いていないだろうから、ここにしたら?』とアドバイスをくれたのです。

建設業に関する知識などまったくもっていなかった当時の大崎さんは、もちろん車の運転もしたことがなかったので、「機械に乗ったらどんな感じなんだろうな」という思いを抱きながら水谷建設のオペレーターとなった。

イメージ大崎さんが運転するバックホウ。オペレーターの名前が付けられていて、この車両は「大崎号」。

オペレーターになるための研修は甘くない

入社してまず、機械の大きさに驚いた。「こんなのに乗れるのかな」と少し自信がなくなってしまうほどに、重機の大きさは圧倒的だった。 それでも、運転を始めてからは「自分はこういうのが好きなのかな」と感じるようになったという。
しかし、そう思い始めるまでの間には、大変な思いをしたこともあった。
重機を操縦するためには、運転免許のほかに特別な資格が必要だ。
水谷建設に入社したオペレーター候補は、まず会社のサポートでこういった資格取得を含む研修を受け、それから現場へ配属されることになる。
建設業の仕事は危険を伴い、時に人の命にかかわる仕事だ。当然、研修はやさしくはなかった。
入社当時の大崎さんは、巨大な重機をうまく操ることができず、少しめげそうになったこともあったという。それでも研修の教官が、こんな励ましの言葉をくれたと語る。
「『男性が多い現場で女性が働くということは周りから厳しい目で見られることもあると思うけど、あなたの性格だったら大丈夫。そういう時があっても負けずにがんばれ』と言われて。『とりあえずやるか』という気持ちになりました」

イメージ最初は重機の大きさに足がすくんでしまった大崎さんだが、今では軽やかに運転席に乗り込む。

建設工事は「段取り八分」

仕事が楽しいと語る大崎さん。仕事が嫌だと感じたことはほとんどないという。
怒られて気落ちしたことはあったものの、「長くは引きずらない性格」が幸いしてか前向きに務め続けられているそうだ。
そんな彼女が現在勤務する現場は、都内の造成工事。広大な現場のため作業量も多く、大崎さんにはそれゆえの悩みもあるようだ。
「『段取り八分』ということを以前に言われたことがあります。重機に乗っていると安全面でもヒヤッとすることがあるので、そうならないためにはどうすればいいかを前もって考えておかなければいけないんです。私はまだ日々あたふたしてしまっていて、周りの人に比べると仕事がちょっと遅いんです。だから今、効率的に仕事が進められるよう努力している最中なんですよ」と語る大崎さん。

イメージ作業中の大崎さんのまなざしは、真剣そのもの。重機の窓からのぞく横顔がカッコイイ。

人と重機の一体感

熟練のオペレーターが操る重機は、土をきれいに、見る見るうちに整えていく。この仕事は操作技能だけではなく、常に機械の施工能率を意識しながら作業を行うとても知的な仕事だ。
大型機械が披露する、きめ細やかな作業。その様子が見事だと言うと、大崎さんも「すごいですよねぇ!」と身を乗り出してうなずいてくれた。
「重機のパワーや動きを引き出して、きれいに仕事をしようと頑張っているところなんです。上手な先輩たちが操る重機の動きは、それはもう見ていて飽きないんですよ!」
そう語る彼女の目は輝いていた。熟練した職人と重機の一体感をイメージしながら、日々自身の技術向上に努めている様子だ。
大崎さん自身の仕事に対するモチベーションも、重機を操るスキルの面にあるらしい。
「それまでできなかったことができた時がうれしいです。『これは技術的にはどうすればいいのかな』と自分で考えて、それができた時には達成感があります」
自分はまだまだと繰り返す大崎さんだが、彼女なりのチャレンジがきっと新たな一歩となっているに違いない。

イメージ人馬一体ならぬ人機一体。重機の能力を最大限に出し切るために日々努力を重ねる。

女性が活躍する環境へと変わる土木の現場

女性から見る建設業界の職場環境は、ここ数年で劇的に改善されてきている。
ひと昔前では女性用トイレ、更衣室すらないような現場も多かったが、女性作業員が年々増加し、女性が働きやすい環境の整備に業界全体で取り組んでいる。
大崎さんに、女性であるがゆえに苦労したことはあったかとたずねたところ、ほとんど思いつかない様子。
上司の古川さんにも伺ってみたところ、以前と比べて、今は満足のいく環境の現場も多いという。
会社でも年々増える女性社員の活躍を応援すべく、産休・育休制度はもちろん、全女性社員へのヒアリングや環境整備に余念がない。
そのかいあってか、水谷建設からは、国土交通省が進める若手技能者表彰「建設ジュニアマスター」に選ばれた女性社員も出てきている。

イメージ上司の古川現場代理人(左)と大崎さん(右)

建設業の仕事を通じて得られるもの

15年になる経験のなかで、大崎さんが得たものはなんだろうか。これまでの現場をふりかえってもらった。
「どの現場も強く印象に残っています。同じ現場に何回も着任したこともあって、そういうところは特に。大きな現場にも行きましたが、特にS県の発電所での造成工事は印象深いです。目の前が海で、発電所のすぐ隣で作業して何度もトンネルをくぐったり。かなり特殊な現場だったと思います」
そんなふうにたくさんの現場を経験してきた大崎さん。オペレーターの仕事では、赴任地に合わせて住まいを転々とすることもあるという。
そういう時には会社が用意してくれる宿舎に移り住み、現場への通勤は同僚と車に相乗りすることになるそうだ。
そんな環境のなかで、コミュニケーション力がつちかわれたと語る大崎さん。
「結構人見知りだったのですが、現場異動が多かったりすると、初対面の人と話さなきゃいけない環境になってくるんです。その環境のおかげか、今は知らない人とでも普通に喋れるようになりました」
技術以外に身についたことだと笑って話す大崎さん。そこには、嫌そうな気配が少しも感じられなかった。
男性の割合が高い環境でのコミュニケーションについて伺ってみると、周囲の人々はとてもやさしいという。
「たとえば重い荷物は持てないので、そこは男性に助けてもらう術(すべ)を覚えるというか」と笑っていた。

イメージGNSSを活用して操縦者の仕事を補助する重機。ICTの進歩がどんどんオペレーターのスキルアップを早めている。

この仕事に対する周囲の人々からの反応について伺ってみた。 入社を決めた際には、それまで重機の話などしたこともなかったため、友人も家族も口をそろえて「えっ、どうしてその仕事?」と驚いていたという。
遠方の工事現場を担当することになり、親元を離れて住むことになった際には、家族からは心配の声があがったという。
しかし今、様々な現場での仕事を経て、家族からはうらやましがられているという。
「ダムをつくるのに携わったとか、色々なところに行ったと言うと、家族は『やっぱり、いい仕事だね』と言ってくれます。各地を巡り、多くの人に出会える仕事なので、『いい経験ができてうらやましい』と言われています」
最初は心配していた家族のイメージは次第に良くなっていったようだ。
最後に今後のキャリアプランについて伺ってみると、資格や昇進よりもスキルに集中したいと、次のように語ってくれた。
「今は重機に乗る仕事をスムーズにできればという段階なので、とにかく自分の仕事をまっとうしたいなと思っています」
自分の成長を楽しむかのように技術向上に注力する大崎さん。今以上に腕に磨きをかけた彼女が、これからも各地の現場を支え続けてくれるだろう。

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