けんせつ小町

けんせつ小町セミナー

第14回

人事担当者向け「WANTから始めよ」セミナー

2023年6月29日(木)13:30~16:25

講師:小倉 広(おぐら ひろし)様

株式会社小倉広事務所 代表取締役

「やりたい」と「事業」をひも付けることはできるのか

14回目を迎えたけんせつ小町主催のセミナーのテーマは「WANTから始めよ」と題し、人事担当者をターゲットに開催されました。講師は「経営に心理学を」をビジョンに、組織人事コンサルタント、企業研修講師、アドラー派の心理カウンセラーとして活躍され、年間で300回を超える講演・研修を行っている小倉広先生です。1年先まで講演・研修の予約が埋まっているという人気講師でありながら、『コーチングよりも大切なカウンセリングの技法』、『任せるリーダーが実践している1on1の技術』(ともに日本経済新聞出版)などビジネス書も多数執筆されています。

セミナーの冒頭に日建連・けんせつ小町支援専門部会の畠中部会長は、主催者を代表してあいさつ。けんせつ小町が2015年から活動を継続していることに触れながら、「けんせつ小町の活動イコール女性にフォーカスした活動というイメージを払拭し、建設業で働く全ての方々にとって働きやすい、働き続けたいと思われる職場、働き方を実現するため」に活動していると説明。性別に関係なく、ライフスタイルや価値観が多様化しつつある現状を踏まえ、社員のエンゲージを高め、リテンションを図る必要性がある今だからこそ、社員一人ひとりの「やりたい」と会社の「事業」のひも付けの体験を参考にしてほしいとセミナー開催の趣旨を説明しました。

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「WANT」から考える仕事や事業

今回のセミナーは、「心理学を使って、今までの皆さんの働き方を根本から考え直してみるというチャレンジャブルな研修」と小倉先生は話します。その言葉に「どんなセミナーになるのか」と参加者は興味津々です。

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まずはビジネスにおいてモチベーションを維持したり、成果を出すためのフレームワーク「WANT・MUST・CAN」を使って頭の体操からスタート。お客様あるいは会社や上司から要望されている顧客価値「MUST」、私がやりたいことや好きなことなど極めてパーソナルな個性「WANT」(もしくは「WILL」)、私自身や会社の能力である強み「CAN」と、三つの重なりがあればあるほど仕事がうまくいくといわれています。

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例えば「MUST」はあるけれど「WANT」がないという状態は、やらなければいけない仕事があるけれど、従業員のモチベーションが上がっていない状態です。この状態から抜け出すには、従業員のモチベーションを「MUST」に寄せるべきだと一般的には考え、フレームワークを活用することで解決策を導いていきます。

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モチベーションを上げるためにインセンティブや評価制度をつくるなどして動機形成を行うのが人事部および現場の仕事です。しかし無理矢理に「MUST」に寄せてもモチベーションは長続きしません。「モチベーションを上げるという手法だけではどうにもならない時代」だからこそ、「私は何をしたいのか」「私は何が好きなのか」「私は何が嫌いなのか」といった「WANT」を明らかにして、「WANT」に「MUST」を引き寄せて考えてみましょう」と小倉先生は提案します。

小倉先生はこの十数年、心理学にのめり込み、趣味も心理学といえるそうです。この小倉先生にとっての「WANT」である心理学を、「MUST」である仕事で使えないかと考えてたどり着いたのが心理学ベースの研修なのだとか。つまり「WANT」ベースでビジネスを開発されたのです。小倉先生ご自身が「WANT」を「MUST」に引き寄せたという事例をもとに、その考え方を分かりやすく解説されました。

リピーティング・インクワイアリーで思考を深掘り

自分自身の「WANT」を見つけていくために、リピーティング・インクワイアリーを参加者全員で実施しました。リピーティング・インクワイアリーとは、哲学的な問いが書かれたカードの中から一つのテーマを選び、その問いを10回20回と繰り返し質問するというもので、話していくうちに「私はこうしたかった」「本当は嫌だった」といった深層心理に迫っていくという手法です。

グループワークのメンバーから、「あなたが最も生き生きとしていると感じるのはどういう時か」という問いを繰り返し投げかけてもらい、問われた参加者が頭に浮かんだものをそのまま言葉にしていきます。「理路整然とする必要ないんです、心に浮かんだものをこの無意識が大事なんです」と小倉先生。

続けて別のお題が出されます。今度は“生き生き”とは真逆で、「あなたが耐えがたい、我慢できないと感じるのはどういう時か」です。参会者は2~3名ごとに分けられたブレイクアウトルームで、リピーティング・インクワイアリーを体験した後に、二つのお題の答えに共通して出てきた事柄や、真逆に感じられた価値観などについて発表し合いながら、自身の「WANT」を深掘りしていきました。

「WANT」から始まるプランを作成

リピーティング・インクワイアリーで自身の「WANT」を探った後は、「WANT」をもとに新制度・新プロジェクトなど新しく始めるもの、既存制度PRJの改善・改革といった改善するもの、既存業務を自己流スタイルで行う私らしくできるものの三つのプランを考えていきました。「WANT」をベースにしながら「MUST」に結びつけられるようプランを練っていくのですが、普段は「MUST」ありきで考えているため苦戦する参加者もいたようです。「私は人事部なのでこれがしたいと、会社のミッションが自分のミッションであるかのように書いている人もましたね。自分はこの部署だからでスタートするのは『MUST』です。わがままだと思えるくらい『WANT』に寄せていくように」と、小倉先生は参加者に細かくアドバイスを送ります。

続けて行われたグループワークでは、個々のプランが「WANT」発信による「MUST」になっているのかをオープンダイアログというカウンセリング技法を使って確認しました。グループワークの場で出た意見や、自身が考えを深めたことを反映しながらプランをブラッシュアップしてきました。

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最後にこの3時間を通して感じたことをチャットに入力して、気付きを全体でシェアしていきました。参加者からは、「自分で本当に求めていることを改めて考えることができた」「WANT、MUST、CANの考えをもち帰って実践したい」「自分は人に何か教えるのが好きだと分かりました。意外にサービス精神旺盛だと気付きました」「MUSTで納得感をもって取り組むためにも、WANTから始めるのが有効だと気付けた」「他社さんとの情報交換ができて非常に有意義」といった感想が聞かれました。

さまざな心理学の技法を使って、自身の「WANT」と向き合い、「MUST」につなげていくという普段は考えが及びにくい思考を深める貴重な時間になりました。本セミナーで深まった思考やプランをぜひ職場で活かしていただきたいです。

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