令和の健人

新時代「令和」を担う技能者。
「令和の建人」は建設業のなかで重要な技能を誇り、その修練に努める次世代の人々を追う企画です。
多くの技能の中には受け継がれてきた人の想いが詰まっています。それらを掘り下げ、日々の仕事を記録すること。これらがきっと建設業にひとすじの光となり、新時代への道筋を照らすと信じて。
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第11回

雨にも風にも負けない屋根をつくるため…明日への期待も担う新人技能者

上野一騎さん

板金工(建築板金)
金属の板を加工し(切る、折り曲げる、貼り合わせる…など)、建物の屋根や外壁、雨どいなどをつくって取り付けます。
「成型機」と呼ばれる機械を使って材料をその場で成型し、施工するケースがほとんどで、工場や倉庫、体育館など大型施設によく用いられます。
高所での作業が多いこと、建物内部に雨水が侵入しないための「防水処理」に関して高い技術が求められることが特徴です。

今春高校を卒業した19歳、建設業界へ

上野一騎(うえの・いっき)さんは、群馬県出身の2001年生まれ。今年の春に社会人となったばかりの19歳だ。 地元・群馬県沼田市にある群馬県立利根実業高等学校の環境技術科土木コースを卒業後、同市内にある建設会社の株式会社テクノアウターに入社した。
「高校に入った時点では、特に建設業界を目指していたわけではなかったんですけど、卒業する時に、近くにこの会社があることを知って、手に職を付けたいと思って入社しました。ここだったら実家からも通えますし」

テクノアウターは1978年創業で、建物の屋根や外壁施工を主に手掛ける会社。
2010年には自社でテクノアウター板金技能訓練センターを設立し、新人育成を行なっていた。2016年には瓦業界と連携し一般社団法人利根沼田テクノアカデミーを設立し、認定職業訓練の認可も受けて技能者の育成にも力を入れている。

上野さんは今年4月に入社後、アカデミーでの約3カ月間の訓練を経て、9月から板金工として現在の現場に勤務している。
「研修では、板金を切るハサミの使い方やビスの打ち方、道具の名前とか、板金加工に関する基礎的な技術を習いました」

イメージ現在は自宅(実家)から朝6時に出社し、数名で車に乗って県外の現場に向かう毎日。
「寒い日の早起きは大変だけど、もう慣れました」
イメージ テクノアカデミーでの研修の様子。
ビス打ち訓練中の上野さん。
(提供:(株)テクノアウター)
イメージ 三級技能検定の課題を行う上野さん。
(提供:(株)テクノアウター)

担い手不足解消、技能者育成を目的として、テクノアウターは自社訓練施設(テクノアウター板金技能訓練センター)にて
新人教育を行なっていたが、2016年4月より(一社)利根沼田テクノアカデミーを瓦業界と連携し設立、開校した。
短期間での実践的な訓練で、専門工事業種の技能や知識を学ぶことができる。
現在は板金技能・瓦技能・大工技能・水道設備技能・左官技能といったコースがあり、
またドローン技能訓練校として、ドローン操縦技術・安全運航管理を取得するスクールもある。

最初は両親に反対され…「危ない仕事」?

ご両親に、この仕事のことを説明したときの反応は?
「最初はやっぱり反対されましたね。高いところの作業が多いので『危ないんじゃないか』と。でも、実際にはちゃんと安全第一でやっていることを説明したので、今はわかってくれています」

屋根の上の作業で大変なのは、夏場の直射日光と下からの照り返し。冬は寒風にさらされるなど、少々過酷な現場だ。
「自分は9月からここに来ていますが、まだまだ暑かったです。多い日は、1日3Lくらい水を飲んでいましたね。冬場はまだ経験してないのでわかりませんが…」

イメージ取材時は雨天だったが、晴れた日は屋根の板が日光を反射して顔面に容赦なく照り付ける。
「夏はサングラスをかけていないと目をやられちゃいます」
イメージ金属を切る特殊なハサミで加工する。
「まだ、僕がやらせてもらえることは少ないです」

先輩や同期とともに、日々成長中

「今はまだわからないことばかりなので…、職長さんに言われて道具を持っていったり、材料を運んだりしています。でも、まだたった1カ月ですけど、『あ、これは前にやった作業と同じだな』というような気付きもあって、少しは成長できているのかな、と思いますね」

作業中に「きついな」と感じる場面は?
「屋根の上で重いものを運ぶこともあるんで、そういう時は体力的にきついなぁと。先輩からは『やっているうちに力は付いてくるよ』って言われています」

イメージ長さ100m以上もある1枚の屋根の部材を20人以上で運ぶ。
歩きづらい屋根の上を、呼吸を合わせて移動しなければならない。
イメージ屋根と壁の納まりの部分で、先輩からビスの打ち方の指導を受ける。
「先輩方はみんな優しいです。道具の使い方を間違えたら怒られることもありますが…」

同じ現場に同期が4人…心強い仲間

今年、テクノアウターに入社した新人は合計7名。
現場には、原則として2人以上1組で配属させるという。
新人が現場で孤立しないように、また同期入社同士で刺激し合い切磋琢磨できるように、という配慮だ。

「この現場には、自分を含めて同期が4人。全員同じ高校から入ったので、仲はいいですよ。仕事のあとみんなで食事に行ったりします。まだお酒は飲めないけど(笑)」

イメージ同期入社の藤本さん(写真左)と。
イメージ「やっぱり職場に同期がいてくれるのは心強いですね」と上野さん。

将来は、少ない工数で利益を出せる技能者に

現場という特性上、やはり完全週休二日ではないが、
「土曜日に、たまに仕事があるくらいなので、大丈夫です。休みの日は、映画を見たりして過ごしていますね」

まだ始まったばかりの現場の仕事、これからどんな技能者を目指すのだろうか?
「職長さんを見ていると、本当に手際がよくて効率的だなと思います。工期を短くできれば、人工も少なくて済む。自分も何年後かには、仕事が早く終わってちゃんと利益を出せる職長になりたいです」

令和時代の建設業界を担う若き技能者のキャリアは、今始まったばかりだ。

イメージ会社の先輩・高橋さんから現場管理のノウハウを教わる。
同社では、「建築板金技能士」の国家資格取得も推奨している。
イメージ完成間近の屋根を見渡す。
「就職するまで、こんな大きな現場の仕事があるとは想像できませんでした。 もっといろいろ経験したいです」