重層下請構造改善

施工体制における法令違反の是正~重層下請構造の改善に向けて~ リーフレットの作成

社団法人日本建設業連合会の労働委員会(井上舜三委員長)は、「施工体制における法令違反の是正~重層下請構造の改善に向けて~」(リーフレット)を作成した。

重層下請構造の是正については、会員企業の取り組みを後押しする働きかけを中心に取り組んできたところであるが、社会保険加入推進に向けた周知、指導が進められる中、一人親方や個人事業者の増加が懸念されており、改めて「偽装請負」をはじめとした法令違反の是正が求められている。
労働委員会の人材確保・育成部会(重層化対策専門部会)では、職業安定法や労働者派遣法、及び建設業法における重層下請構造を助長するような法令違反を是正するための教宣資料を作成し、会員企業をはじめ、下請業者への周知徹底を図ることとした。
資料の作成に当たっては、元請業者の社員にとどまらず、重層下請の恐れがある下請業者の経営層、職員、職長、さらには一人親方、個人事業者を読み手の対象に設定して、読みやすいボリューム(少ない紙面)、明確な表現、イラストを用いて分かり易い資料となるようリーフレットとして編集している。

重層下請構造が抱える問題

  • ・下請階層が増えるにつれ、手数料や経費が発生し、労務費へのしわ寄せを生み、雇用そのものが不安定になるなど、技能労働者の確保・育成を困難にしている。
  • ・末端の技能労働者を把握、管理できないため、労働災害や建設生産物の品質低下を引き起こす恐れがある。

(1)重層下請構造の背景

  • ・重層下請構造は、専門化・分業化の進展だけでなく、受注産業の特性として業務量の増減による受注環境に応じた経営の安全弁、あるいは工事費縮減を図るため、下位の階層へ外注化が進んだことがあげられる。
  • ・その中で、末端の技能労働者をみると、主に一人親方や個人事業主の増加が重層下請をさらに深化させる一つの要因になっている。

(2)一人親方や個人事業主の増加の要因

  • ・請負単価が低下することにより、社会保険料の事業主負担等を支払うことが難しくなることや、技能労働者自身が一定の手取り額を確保するために社会保険への加入を拒むことから、企業が技能労働者を直接雇用せず、一人親方や個人事業主が増加する傾向がある。
  • ・社会保険加入を徹底することにより、これまで雇用されているものの社会保険は未加入となっていた技能労働者は、社会保険料について雇用先企業の事業主負担、あるいは技能労働者の個人負担の支払いを回避するために、従来にも増して一人親方や個人事業主の増加が懸念される。
    ※昨年、日建連会員企業を対象に実施したアンケートでは、18社/40社が一人親方は増加していると認識。

(3)派生する法令違反(偽装請負等)

  • ・重層下請の一つの要因である、雇用から切り離された技能労働者は、形式上「請負」となっていても派遣先の現場において指揮命令を受ける場合は、「偽装請負」に該当し、労働者派遣法や職業安定法の違法な状態となる。
  • ・また、建設業法上においても、重層下請構造に伴って、一括下請負の禁止、無許可業者への請負制限、主任技術者の配置義務などの法令を遵守できなくなる恐れがある。

日建連の取り組み

日建連では、平成21年4月、近年の建設技能者の高齢化や新規入職者の減少、定着率の低下等による熟練技能者の不足が近い将来、建設産業の根幹を揺るがすことになるという危機感から、下記6項目からなる『建設技能労働者の人材確保・育成に関する提言』を行い、その推進に取り組んでいる。

  1. 技能者の賃金水準の引き上げ
  2. 建退共制度の加入促進
  3. 重層下請構造の是正(原則3次以内)
  4. 建設技能者の育成支援
  5. 作業所の労働時間の短縮等の労働環境の改善
  6. これら技能労働者の確保のための広報活動の強化
  • ・これらの活動は、労働委員会に設置している人材確保・育成部会を中心に、各課題に対応するべく「賃金専門部会」「重層化対策専門部会」「建退共・労働環境専門部会」を設置し、提言の掲げた6項目の実現に向けた活動を行っている。
  • ・加えて、技能労働者の処遇低下の要因とされる社会保険の未加入対策を推進するため、平成24年4月に『社会保険加入促進計画』を作成するとともに、人材確保・育成部会の下に「社会保険加入推進専門部会」を設置して、元請企業の立場から、国土交通省の加入推進に向けた施策の展開方法の提示や課題の抽出を行うなど、積極的に取り組んでいる。

(参考)

  • ・日建連「社会保険加入促進計画」(平成24年4月19日)抜粋

(2)団体が取り組むべき対策
⑦重層化の改善

  • ・「一人親方」「偽装請負」など職業安定法や労働者派遣法に基づく適法性を的確に判断できる教宣資料を作成し、会員企業への周知徹底を図る。
  • ・下請契約時の関係法令の適法性のチェック徹底による下請企業の選定、さらには同主旨の下請企業に対する指導を会員企業に要請する。

(3)会員企業が自ら実施すべき対策
③重層化の改善 (上記(2)⑦の教宣資料の作成を受けて、以下の事項について取り組む )

  • ・下請企業に対して、「一人親方」「偽装請負」など、職業安定法や労働者派遣法に基づく適法性のチェック、指導を行うとともに、適法な下請企業の選定、さらには同主旨の再下請企業への指導を求める。

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