海洋開発

海洋の開発と利用は、国民生活の向上と経済の発展にとって欠かすことができません。
豊かな資源、エネルギー並びに利用空間を有する海洋は、資源の乏しいわが国にとって、無限の可能性を秘めております。
海洋開発委員会では、海洋開発建設技術の進歩と開発事業の促進に取り組み、多くの経験と技術を蓄積してまいりました。
当委員会では、それらの情報を収集してとりまとめ、海洋開発技術講演会で報告しております。

1. 海洋開発技術講演会(概要)

・2020年度

2020年度 海洋開発技術講演会

日本建設業連合会の海洋開発委員会(武澤恭司委員長)は9月28日、東京都千代田区の如水会館で「海洋立国を支える建設技術」をテーマにした海洋開発技術講演会を開催しました。
3月開催の予定でしたが、新型コロナのため延期されていたものです。
感染対策のため定員を減らし、オンライン配信も行われました。
武澤委員長は開催時の挨拶で「新型コロナウイルス感染症への対応のため、建設業界においても新たな働き方や仕事のあり方が求められている。
今後は内勤に加えて外勤も積極的に見直し、効率化や生産性の向上に取り組む必要がある」こと、また、激甚化する豪雨や台風などによる災害について「わが国の人口や資産の多くは沿岸部にあり、海洋開発という立場にあっても強靱化の視点が重要になる」と述べました。

「南極で暮らす知恵 ―エネルギーと建物―」
日本極地研究振興会理事・石沢賢二先生

南極観測隊の越冬隊として5回、夏隊として2度、南極へ渡った経験を元に、南極大陸の歴史や現状、温暖化の影響、輸送とエネルギーの確保、再生可能エネルギーの利用、雪による建物の埋没を防ぐ工夫など、我が国での常識を越えた環境で暮らすことについてお話をいただきました。
例えば、南極で基地の建物を建てる際、問題となるのが雪による埋没であること、地吹雪を伴った風に定常的に吹き付けられると風下側から建物が埋まっていくため、日本隊が初めて内陸氷床に建設したみずほ基地やアメリカのアムンセン・スコット基地は数十年で完全に埋没したことや、沿岸部の棚氷上に建設された基地施設は、積雪量の多さに加え棚氷自体が海に向かって流動していることから、建物の維持のための工夫・努力が必要なことなどです。
内陸の基地では隊員数が少なく、一人一人が自分の専門外の役割まで担う必要が出てくること、少人数で創意工夫し問題解決することが南極の生活の楽しみであるとお話をいただきました。

「イルカと話したい! ―イルカの知能と言語能力―」
東海大学海洋学部教授・村山司先生

高校生のときに見た映画「イルカの日」をきっかけに、イルカと会話することを夢として取り組まれていることについてお話をいだきました。
イルカの生物学的分類、進化の過程、脳の特徴、知性を測る指標の値がヒトに次いで高いとされていること、イルカから見た世界、数を認識できるか、字や絵を認識できるかなどについてお話しされました。
そして、ヒトが模倣によりモノの名称を文字または音声として認識し、文字と音声を、物を介さずに結びつけているという仕組みに着目し、それをイルカの学習にも取り入れ、文字を見てその文字があらわすモノを鳴音で呼べるか、聞き分けができるか、音に対応した文字を選べるかということを試しながら研究を進めておられます。
今後は、名詞と動詞でできた文を話し、聞くことができるか、さらに、イルカにまねをしている音の意味を理解させることで、ヒトの言葉を使った会話を実現させたいとお話しいただきました。

各部会の報告

(1)洋上風力事業化促進専門部会 活動報告の概要 宇佐美栄治
政府は2030年の電源構成比で、再生可能エネルギーの割合を24%程度まで引き上げたい考えで、その実現のためには風力発電全体で現在よりさらに1000万kW分の設備建設が必要になる。
再生エネルギー海域利用法が策定された17年以降、洋上風力発電の計画は大幅に増えており、19年11月現在で1300万kW以上もの案件が環境アセスメント手続きを進めている。これを受けゼネコン各社では大型SEP船建造などを進めている。
一方、日本国内の発電コストは欧州と比較して割高で、建設コスト低減は喫緊の課題であり、買い取り価格も大幅に引き下げることとされている。
このため風車の大型化、施工の効率化が進展しており、風車をささえる基礎構造と上部をつなぐ接続部の構造が、欧州ではトランジションピースを設置しグラウドで接合する構造から、ボルト接合へ、さらにはトランジションピースを無くした構造まであらわれている。これを我が国に適応するには、耐震性の課題、施工精度の課題などを解決して行く必要がある。
また、洋上風力の事業化促進のため、技術基準の明確化・技術審査の迅速化、24時間体制で施工するための環境整備などが必要になってくること、また、発電設備の設置海域と工事のための基地港湾の距離は建設コストに大きく影響する上、発電設備の大規模化も進んでいるため、洋上風力事業化の計画段階においてどの港湾を使用できるかが重要なポイントとなる。さらに、人材育成も急務であり、欧州へ人材を派遣するなどし、広く経験を積める環境も必要となる。

(2)空港部会 活動報告の概要 水流正人
現在、首都圏空港の機能強化は、羽田空港では新飛行経路の運用を2020年3月末より開始し、また、成田空港では既存滑走路の延長や滑走路の増設などに向けた取り組みが進められている。これは国土交通省の交通審議会航空分科会「首都圏空港機能強化技術検討小委員会の中間とりまとめ(平成26年7月)」に基づいている。
一方、新型コロナの影響で、現在は海外からの訪日客は激減しているが、アジア、欧米での訪日意欲は高く、いずれもコロナ後に訪れたい国の上位に挙げられている。国際航空運送協会(IATA)は、2024年には旅客数が新型コロナ以前の水準に戻り、その後は更に拡大していくと予想している。
空港部会では世界都市としての首都圏の価値を高めるためにも、空港機能強化は引き続き検討する必要があると認識し、これまで羽田空港の拡張について検討してきた経緯をふまえつつ、「羽田空港の国内・国際ハブとしての機能」「災害・事故に対するレジリエンスの強化」「道路・鉄道アクセス機能の向上」の3つが機能向上の大きな柱になるとした。
このため、内際接続機能の拡充、また、自然災害や施設老朽化対策、航空輸送などの定時制・安定性向上、また、空港アクセスについて、鉄道については、東京西部の人口集積地からのアクセス向上、道路については、外環道などの完成による湾岸道路への交通量増大、多重化など必要となる技術課題について検討していくこととしている。  

講演会風景

2. 調査研究報告