廊下
教室の廊下はゆったり幅を取り、ただ通過する場所とはしないように配慮。語りの場として使えるように椅子を作り告知スペースやホワイトボードを付け、壁面を有効利用しました。

屋上
以前は自由に出入りできなかった屋上を庭園として開放。芝生などで緑化し、憩いとなるウッドデッキも作りました。自由にお昼ご飯を楽しんだりベンチに座ってお話をしたりと人気の場所となっています。

リレーションブリッジ
本館とNGプラザを結ぶ空中ブリッジ。校舎だけでなく、「人と人とをつなげたい」という、生徒の熱い思いからつくられました。光あふれるブリッジは、常に生徒たちが行き交い、学園生活での大切な場所になっています。

※PHOTO a.fukuzawa


設計者として思い出に残る作品ができた。そう思える仕事でした。

前頁に登場の下村さんと伊藤さんが設計者を選定する際、ある条件を掲げた。それは、「何度も学校に通うことをいとわず、とことん子どもたちと付き合い、彼らと同じ視点が持てる人」。

荒井さんと福田さんはその条件にぴったりの熱い思いを持った方たちだった。
「設計者にとって学校は永遠のテーマ。やりがいが全然違います。学校をやりたいという人は多いのですがゼネコンは民間物件しか携わる機会がない。ですから意外と仕事の中では少ないのです。そうした背景があるので、この話が来た時は飛びつきました」と荒井さん。仕事を終えた今の達成感は、定年後に思い返す仕事ベスト3に入ると言い切る。

今回のプランは、文化祭で生徒たちが発表したプランを元に、二人が最終設計図を完成させた。 一位のプランを採用するのではなく、これはと思うアイデアを抜き出し、さらにブラッシュアップさせた形だ。少し理想とは遠い形の生徒たちのアイデアも、彼らの知識と経験が加わることで実現に見事導くことができた。
「例えば、どのチームも山はできるだけ削りたくないとは言っていてもプランでは削るようになっている。そこで、山を最も削らず配置できるのはこの形と成功例を提示していきました」
どういう要望があるのか、まずは現状把握と問題提起から開始。
生徒のアイデアが取り入れられた部分も多く、学園の顔となった大階段や、校舎をつなぐ廊下「リレーションブリッジ」はその名前やN字の補強など、校内の随所に見られる。
「完成したのを見て、発案した生徒は『俺やっちゃった!』と驚いていましたね。とにかく彼らにそうした達成感を味わってほしかったので、なるべく拾い上げて作りこんでいったつもりです」福田さんもうれしそうだ。

生徒のプランはセミナーや指導のおかげで最後はすばらしい作品に。 男女の染色体をあしらったトイレのアイコン。これも生徒のアイデア。 渡り廊下には奈良学園の頭文字Nで補強を。考えた生徒は大喜び。

「設計とは生みの苦しみという言葉があります。何もないところから形にしていくことは普通の人が思っている以上にものすごく苦しい場合が多いです。もちろん今回も苦しみはしたのですが、夜オフィスで二人で話し合っていると生徒や先生の顔が浮かび自然に答えが導き出せました。そういう意味では今回生みの苦しみというものはどこか違っていました」と荒井さんは振返る。設計という仕事が、彼らにとっては人生の喜びであるということを久しぶりに感じた仕事だったとうれしそうに語ってくれた。