PTS室
皆が気軽に交流できる場として作られたPTS室。名前(保護者〈parents〉、先生〈teacher〉、生徒〈student〉の頭文字を合わせて命名)、サインも生徒が考えたものを採用しました。

ライブラリー
以前は別棟だったライブラリーが教室棟と連結。中学・高校の両棟から出入り可能となったことで利用率が3割り増しになったそうです。テラスからの風景も絶景です。

※PHOTO a.fukuzawa

ゲーム感覚とスピードを大事に
皆が楽しく取り組むことを
心がけました。

伊藤さんの所属する学校教育チームは、10年ほど前から学校作りに取り組み、今までに全国の中学高校大学を100校以上手がけてきた。

それまでの仕事スタイルは、彼が経営者や校長先生などの校舎に対する夢を聞き、それをどのように形にするかを整理してから設計に引き継ぐまでが主だった。しかし、本プロジェクトでは、学校担当者から「校舎をただ建て替えるのではつまならい。今の子どもたちがほとんど経験のない『物を作る』ことを教育に生かしたい」という要望の元、根幹からの企画や全工程の進行において参加することとなった。

立てた目標はただ一つ。生徒が興味を持ち、のめり込めるような企画を考えることだ。プロジェクト参加者の募集方法からセミナー、進行方法、アンケート作りなど、ややもすれば四角四面な進行になりそうな内容に伊藤さんは「ゲーム感覚」を取り入れていった。
「とにかく『楽しさ』と『スピード』がなくては子どもたちは飽きる。長く時間をかけてはだめです。後は進学校の生徒たちなので内容のレベルは高くするよう心がけました」
アンケートの質問事項も生徒に考えさせたり、プログラムにすべて参加した人にはプレゼントを用意したり、記念グッズを作ったり。
中でも秀逸なのが、生徒たちが思う校舎を図面に落としやすくするため、発泡スチロールで教室や廊下などを同じ縮尺率で小さくしたものを1セットにして箱に詰め、それを各グループに渡して議論させるというキット。
「これは建築の教育もできてよかった。ゲームのソフトとして売れますよ(笑)」


伊藤さんたちが考案したツールの一部。


在校生に渡すアンケートは質問から生徒と作成。

プロジェクト進行中は、他のスタッフに、「遊び心を持たないと子どもがついて来ないよ」と常に声をかけていた伊藤さん。他のスタッフもそれに乗せられてやった、と声を揃える。しかし、ご本人はさらっと「何でも楽しくやらないとね」と笑う。
「我々は校舎ができてほっとしていますが、学校は今からがスタート。大きな印象を与える空間は非常に大きな役目を果たします。今回はいい校舎ができましたが、まだまだいろんな仕掛けのアイデアがある。今後も全国の学校に種を植えていきたいと思います」
プロジェクトを生徒に説明。段階を踏んで参加できるよう配慮した。

伊藤さんもできるだけプロジェクトに参加。これは測量体験の時。