提言・要望

2013.09.19

東京五輪等に係る事業の執行について

 
 
1 東京五輪による建設投資
 東京五輪の開催による直接的な経済効果は約3兆円で、うち会場施設の整備など直接的な建設投資は約1兆円と言われている。
 この1兆円は、仮に純増であるとしても、今後7年間の投資額であり、平成25年度単年度の建設投資総額約50兆円と比べれば小さなもので、それ自体は建設業の執行力に影響を及ぼすほどのものではない。
 しかしながら、2020年の東京五輪が明確なタイムリミットになり東日本大震災の復興事業が加速されること、湾岸地域、羽田・成田など首都圏の機能強化が喫緊の課題となること、東京の耐震化が急がれること、首都高をはじめとする老朽インフラの再生が求められること、さらに東京五輪による観光産業など多方面での誘発的な建設需要や、東京五輪が諸々の産業を活性化し設備投資の需要が高まること、等々東京五輪の決定により様々な波及効果が想定される。
 今日の国民的課題である全国防災、都市再生、国際競争力強化のための基盤整備、インフラ再生などのための建設事業に加え、これらの東京五輪に関連する建設事業を円滑に執行することが建設業界の使命となるが、そのためには、現状での技能労働者の不足は深刻である。また、多年にわたる建設投資の減少の中で建設企業はスリム化しており、土木を中心に技術者も相当タイトな状況にある。


2 技能労働者及び技術者の確保、育成
 技能労働者の確保、育成については、先に日建連が「労務賃金改善等推進要綱」を採択したところであり、これに従ってその処遇改善を着実に進めることが基本であるが、当面の不足に対処するには、技能労働者の処遇改善を急ぐとともに、新規入職者の確保に向けた対策を早急に進める必要がある。
 幸い、東京五輪の決定は建設業を夢のある職場とPRする絶好の機会であるので、この際、災害復興や原発事故対策等の役割とはまた違った建設業の側面を強調し、若者たちへの訴求を強めて行きたい。
 技術者の確保、育成については、新卒等の採用拡大や定年退職者の活用など建設企業の対応とともに、技術者の専任要件の弾力的運用など発注者サイドの現実的な協力が求められる。
 また、発注者サイドでも技術者の不足が顕在化しており、限られた技術者の効率的な活用を図るため、入札手続きの簡素化(例えば指名競争入札の活用)など受発注者双方の技術者の負担を軽減する対策を思い切って実施することが求められる。


3 建設事業の安定確保と円滑な事業執行
 しかしながら、技能労働者の処遇と雇用の安定を推進するとともに、建設企業による将来を見据えた技術者の確保を図るためには、建設投資の安定的な確保が何よりも重要である。
 そのため民間の建設投資については、デフレの克服と安定した経済運営の定着が期待され、公共投資については、公共事業費の安定確保が求められる。
 特に公共事業費の確保については、財源確保がない中での社会保障費の自然増が多年にわたり重石となってきたが、消費税の引上げが実現し、財政構造が改善に向かうのであれば、平成26年度政府予算において公共事業費の安定確保の道筋を確かなものにすることが最大の焦点となる。
 そのためには、国交省をはじめとする関係者と連携して運動を展開するとともに、日建連としては、技能労働者の確保と技術者の有効活用を図り、増大するであろう建設事業を円滑かつ着実に執行することを、ここに決意し、内外に表明するものである。

                                      以 上